<①の記事から続く>
連日、猛暑とともに、ゲリラ豪雨のニュースが続く。
前回の記事では、首都圏の水害リスクについて調べてみた内容を記載したわけだが、
それ以外の地域にお住まいの方にとっては、「それがどうした」という内容だったと思う。
もちろん首都圏だけの問題ではない。
日本は山地が国土の大半を占めており、居住に適した平地が少ないので、必然的に河川の河口部の低地に人口が集積することになり、そこに大都市が形成される。その結果、浸水リスクエリアに多くの人口が居住する状況ができあがる。
三大都市圏はどこもこの傾向が顕著である。
なお、本稿で記載しているようなことは、その土地にお住まいの方からすれば、「分かり切ったこと」であり、「おまえに言われる筋合いないわ」と思われるかもしれない。
しかし、前回も書いたが、現代社会にあっては、「親の代から同じ土地で生まれ育っている」という人ばかりではない。転居などによって、その土地のことをよく知らないまま暮らすということもたくさんあると思っている。
冒頭で、東京東部に標高が0mを下回る地域が広がっているという図を貼った。ここで再掲する。

同じ水準で標高を色分けしたものを、大阪周辺や名古屋周辺についても作ってみた。
大阪近辺の様子
大阪近辺について標高図を作ってみると、淀川の河口部付近に、兵庫県の方にもまたがって、標高0m以下のエリアが広がっているのが分かる。

やや広域で見たのがこちら。

大阪平野は、縄文時代前期には内海の一部であり、その後、淀川や大和川の氾濫で堆積した土砂により低地が形成された…という成り立ちが大阪府のウェブサイトでも紹介されている。
多くの河川があることで水運が栄え、「水の都」と呼ばれた歴史の一方、その繁栄は水害リスクと隣り合わせである。
淀川の河口部にも、埋立地は多い。そのことは地理院の地図でも確認できる。
前回の記事で東京駅の周辺の土地の成り立ちを見たが、同じ項目で大阪駅から沿岸部の自然地形を見てみる。

大阪駅があるのも、東京駅と同じく「氾濫平野・海岸平野」(薄い緑のエリア)であり、洪水で運ばれた砂や泥などが河川周辺に堆積したり、過去の海底が干上がったりしてできる地形だ。
そして臨海部に向かっていけば、西九条駅の当たりから西は灰色になっており、これは「旧水部」。かつて海だったところであり、干拓地や埋立地にあたるということだ。
名古屋近辺の様子
次は、名古屋近辺についても見てみよう。東京・大阪と同様に塗り分けてみたものを示す。

同じく広域の図も貼っておく。

名古屋市西部を含め、庄内川と木曽川に挟まれた地域は、一帯がかなり広い範囲で青く染まっており、東京や大阪と比べてみても、その範囲が広い。
濃尾平野には、日本最大の海抜ゼロメートル地帯が広がっているといわれる。
1959年の伊勢湾台風は、東海地方で死者・行方不明者5,000人以上(名古屋市で1,800人以上)という甚大な被害をもたらしている。
私は小学校のころ、社会科の教科書で「濃尾平野のくらし」というような内容を習ったことをよく覚えている。昔から水害に苦しめられてきた地方なので、輪中という堤防で集落を囲い、守っていますという内容だった。
名古屋圏の地形分類を見れば、東京や大阪と比べてもかなり大規模に「旧水部」のエリアが広がっていることが分かる。
(「旧水部」が広範囲にわたっているので、うまく地図が切り取れなかった)

国道1号より南側(海側)は、大半が灰色になっており、これが「旧水部」。つまり、干拓地・埋立地ということになる。
国道1号の北側は薄い緑色で、「氾濫平野・海岸平野」だ。
一方で、東側にある熱田神宮の近辺は土地が高く、「台地・段丘」になっていることが興味深い。
三大都市圏以外でも…
以上、三大都市圏の水害リスクを可視化するために地図を見てきた。
ここまで、話を単純化するために主に洪水による浸水を想定して書いてきたが、
三大都市圏沿岸部の低地には、川の氾濫だけではなく海からの高潮のリスクもある。
(前述の伊勢湾台風は、高潮による被害が顕著だった)
このことも忘れてはならないだろう。
では三大都市圏以外の地域ではどうか。
冒頭に紹介した、洪水リスクのあるエリアに居住している人口を都道府県別に見たデータによれば、
洪水リスクエリアに居住する人口の割合が4割を超えているのは、以下の県である。
埼玉県(46.7%)、新潟県(40.7%)、富山県(54.8%)、福井県(52.7%)、京都府(45.5%)、大阪府(47.0%)、岡山県(50.8%)、徳島県(59.1%)、佐賀県(40.6%)
中でも富山、福井、岡山、徳島では、半数を超える。
例えば富山県を見てみよう。
ハザードマップを確認すると、富山湾に向かって注ぎ込む河川の下流域を中心に、浸水想定区域が広がっているのが分かる。

富山市中心部を少し拡大してみた。
神通川の東側に位置する富山駅の近辺もかなり深い浸水深になっている。

富山県では、富山市を流れる神通川のほか、黒部川、常願寺川、庄川、小矢部川といった一級河川をはじめ、多数の川が富山湾に向かって注ぎ込んでおり、急流河川が多い。
富山県のウェブサイトには、以下のような記載があって、そんないきさつを知らなかった私は驚いてしまった。
廃藩置県の後、明治9年に富山は、隣の石川県と合併し「石川県」となりました。しかし、道路の改修を主に考える石川県側と、治水に重点を置く富山側とで、土木費の分配をめぐる利害の対立が、合併以来の懸案となっていました。
そこで、明治15年、入善町生まれの米澤紋三郎らが、水害に苦しめられてきた富山の人々のため、石川県からの分県を国に嘆願。翌年の明治16年5月9日に石川県から分県して、富山県が誕生したのです。
つまり、富山県は治水に重きを置く考え方のゆえに、石川県とお別れしたんです、という説明なのである。
そして、例えば岡山県。
平成30年(2019年)西日本豪雨では、倉敷市真備町を中心に甚大な被害が出たことをご記憶の方は多いだろう。
実際にハザードマップを見てみても、広い範囲が浸水想定区域になっており、非常に危険な川がたくさんあるということがわかる。

岡山市付近を拡大してみたのがこちら。
岡山駅周辺も、名勝の「後楽園」も、浸水する可能性がある。

「晴れの国」と言われ、雨が少ないイメージの岡山県だが、ひとたび雨が降れば、こんなリスクも潜んでいるのである。
まとめ(というか、感想)
全国の地域について、いくつかの例を見てきたが、印象としては、「どこもかしこも浸水想定区域に見える」という感じである。
今回見たのは水害リスクエリアであるが、日本は災害大国であり、地震や津波のリスクもある。
ハザードマップを眺めていたら、どこもかしこも危険そうで、「じゃあどこなら安全なんだよ」という気持ちになったりする。
実際、前回記事の冒頭に紹介した分析で示されていたのは、災害リスクエリア内に7割近い人口が居住しており、その割合は今後も増えるという想定であった。
つまり、「あなたも私もきっと何かの危険エリアに住んでいる」。
日本という国土に住んでいる以上、土地の災害リスクから完全に自由になることは難しい。
これは気が重くなる現実だ。
我々は住む場所を完全に自由に選べるわけではない。
自分で身を守るために、まずは住んでいる土地のリスクを認識することは有効である。
この先、台風や水害に要注意の季節が続く。
各自で情報収集に努めたいところだ。


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