春の「昇仙峡」は渓谷美を堪能できる絶景ハイキングが楽しめてオススメ…ただしバスの時間には要注意

旅行・地域ネタ

山梨県の名勝、昇仙峡
甲府市の北の山間部に位置し、断崖や奇岩が織りなす独特の景観と、豊かな水の流れを有する渓流の美しさが売りの人気スポットだ。
特に、紅葉の時期の景観の美しさで知られており、秋には紅に染まった渓谷の風景を求めてたくさんの人が訪れている(私もその時期に訪問したことがある)。

一方で、紅葉の時期にかかわらず、美しい渓谷には四季折々の魅力があるというもの。
先日、春を迎えた昇仙峡の景観を求めて、山梨旅行の際にハイキングに行ってきたので、その模様を報告したい。
一言で言うと、「春の昇仙峡も素晴らしいが、行くなら4月になってからにしよう!」ということである。

最初に、上記の記載の趣旨を説明しよう。
私は車なしの旅行だったので、甲府からバスで昇仙峡に到達した。
所要30分程度で昇仙峡入口(バス停:「昇仙峡入口・天神森」)に着くことができる。
バスのルートは、「昇仙峡入口」の先にも、さらに上流に続いており、「グリーンライン昇仙峡」「昇仙峡滝上」というバス停があるのだが、冬期(12月~3月)はバスがそこまで運行していないのである(時刻表はこちら)。

下の図は、昇仙峡観光協会のHPで紹介されているモデルコースのうち、
最初に載っている「渓流沿いの山路を楽しむ トレッキングコース」というコースのルート図である。
実際、私自身がこのコースをたどって歩いて行ったコースだ。
このうち赤枠で囲った場所にバス停(赤字記載)がある(いずれも筆者加工)。

これを見ると分かるように、バスで行く場合は、「昇仙峡入口」に到着し、このコースを上流に向かって(①~⑰まで)歩き、帰りは最上流のバス停「昇仙峡滝上」からそのまま帰るのが理想的である。
しかし、バスが上流のバス停まで運行されないとなると、帰りもこの6㎞の道を歩いて、「昇仙峡入口」まで戻るしかないというわけだ。

いつもは子ども連れで旅行している私だが、この日はわけあって数年ぶりの一人旅
健康な大人ひとりなら、6㎞歩くくらいは苦にもならないが、さすがに帰りも同じルートをもう一度戻るというのは、ややキツい感じがする。
そのため、電車・バスで行かれる方は、ぜひバスが上流まで運行される4月以降に訪問されることをオススメしたい。

実際、その日(3月末)、バスで訪れている人はほとんどおらず、昇仙峡入口のバス停で下車すると、同じ目的と思われる旅行客が2、3組いる程度だった。

昇仙峡の渓流沿いにはずっと遊歩道が整備されているので、道沿いに歩けば迷う余地もないし、足もとが悪い場所もない。渓流の景観を眺めながら、少し登りになっている道を歩いていく。

ほぼ誰もいない渓流沿いの遊歩道を上流に向かって歩いていく
岩が連なる渓谷。まだ緑の季節には早く、山の景色は枯れ木の色が勝っている

渓谷の眺めをゆっくり楽しみながら歩いていくと、途中、昇仙峡の特徴である奇岩・奇石が次々出てくる。
川の中に、「亀石」だの「ラクダ石」だの「猿岩」だのと、何かの形に見立てて名前をつけられた、変わった形の石・岩がたくさんあり、その場所ごとに道の端に矢印つきの表示がされている。
正直なところ、この手の「見立て」については、「あ、確かに!」と思うこともあれば、「いや、それはちょっと・・・無理あるでしょ」ということもある。
昇仙峡の奇岩類も、私の目から見てすんなり「あ、松茸だな」と思えるようなものもあれば、「いやーこれがネコといわれても・・・」というのもあった。
だが、何にせよ、そんな名前を確認しながらブラブラ歩くのが楽しいのだ。

これは「亀石」だそうだ。うーん…まあ、そうかな?
「ラクダ石」。一応、コブの形…なのか?
高いところに見える「猿岩」。サルの顔に見えるようだ
「大仏岩」らしいのだが、そう言われても…
こんな感じで看板が立っている。しかし、どれが「トーフ岩」なのか判別できなかった
「松茸石」とのこと。うん、これは分かる
「えぼし岩」。これも納得
「寒山拾得岩」。唐の高僧、寒山と拾得のふたりが並び立つ姿…だそうだが、ここまでくるともうサッパリ

川沿いの景観は、緑いっぱいという時期にはまだ早かったが、ところどころ、鮮やかなピンク色の花が目につく。
これはミツバツツジの花で、昇仙峡では春にたくさん見られるらしい。小ぶりな花がたくさん咲いて、遠目にみると美しさが際立つように思われる。

鮮やかなピンクのミツバツツジが目につく

上記のルート図にもあるように、途中「天鼓林てんこりん」という林にたどり着く。
「林の中に立って足を強く踏み鳴らすと地中からポンポンと鼓の音に似た共鳴音が返ってきます」というのが名前の由来らしいが、残念ながらその現象は確認できなかった。
少し開けた広場のようになっており、テーブルや椅子、トイレなどがあるので、休憩にちょうどよい。

天鼓林。林の中の広場みたいになっている
ソメイヨシノとミツバツツジが競うように咲いていた

さらに歩くと、駐車場もあるバス停「グリーンライン昇仙峡」の近辺に到達する。
ここまでほとんど誰もいなかったのだが、駐車場のあるエリアに来たことで、他の観光客の姿が少し見られるようになってきた。
その近くにある「天空乃杜 庭園」という広場で私は休憩し、持っていた軽食でお昼にした。
花や緑が美しい赤砂利の広場である。
昇仙峡の主峰、覚円峰が遠くに見え、渓谷の水音がする。蝶も飛び回ってとても気持ちのいい空間だった。


ここまでで大体コースの半分少々を歩いている計算になる。ここから先が昇仙峡のメインエリアと言っていい。

10分ほど歩くと、昇仙峡でいちばん有名な景観と思われる「覚円峰かくえんぽう」を間近に望める場所へたどり着く。
まさに昇仙峡のメインビジュアルというべき景色が広がっている。

不思議な形で空に突き出す覚円峰。昇仙峡のパンフレットに載ってそうなビジュアル

覚円峰は昇仙峡の主峰であり、「その昔、澤庵禅師の弟子僧侶覚円が畳が数畳敷ける広さの頂上で修行したことが、その名に由来します。花崗岩が風化水食をうけてできたもので、急峻で直立約180メートルあります」だそうだ。

※ここにもトイレがあったようなのだが、落石による損壊で現在使えなくなっているので注意。訪れた際には工事中の様子だった。

覚円峰と、その向かい側にそびえるゴツゴツした「天狗岩」がセットになった眺めは大迫力で、奇岩が目の前にグワっと迫ってくるような景色である。

左の覚円峰に向かい合うのが右側の天狗岩。ゴツゴツと荒々しい岩肌

風化・浸食といった長年にわたる自然の作用が作り上げた景観は、誰の意思も介在しない自然のありのままの働きの結晶なのであり、偶発的にできあがった唯一無二のものだ。
だからこそそれを眺める人間を圧倒するパワーがあるのだと思う。

覚円峰を見ながらさらに歩くと、花崗岩の巨石でできあがった自然のアーチ「石門」が現れ、よくこんな造形が偶然に(人為的にではなく)できあがったものだなと不思議な思いがする。

巨石で自然にできたアーチ「石門」

石門をくぐり抜けて橋を渡れば、いよいよ「仙娥滝せんがたき」に到着だ。
仙娥滝は、落差約30m、日本の滝百選に選定もされているという滝で、覚円峰と並び、昇仙峡のメインビジュアルの一つであろう。
たどり着くと、豊富な水量を感じさせる轟音が鳴り響き、水しぶきを飛散させながら清冽な渓流の水が勢いよく流れ落ちてくる様子が見える。

美しい「仙娥滝」に到着。水しぶきが心地よい

「仙娥」とは、中国神話に登場する仙人で、月に行った女性「嫦娥」に由来する、と説明されており、
そのように聞くと、滝の形もなるほど端正で、整っており、嫦娥の名に似つかわしいのかなと考えたりする。
滝の側は涼しくて清らかな空気に満ちており、実に心地よい。ずっとボンヤリ滝を眺めていたくなる。

豊富な水が優美に流れ落ちてくる
「全国第2位」というなんともビミョーなアピールをされても、コメントに困る

滝の横には、180段の階段があり、階段を上まで登りきると、お堂や商業施設がある場所にたどり着ける。

滝の上に階段で上がると、お店が並ぶ開けた場所に出る
水晶玉が鎮座するお堂もある

さらにその先まで進むと、「水晶街道」と呼ばれる、お土産屋や飲食店が建ち並ぶ車道に出る。
昇仙峡では昔、水晶が発掘されていたので、宝石文化が育っており、天然石のお店がたくさんある。それで「水晶街道」と名付けられているらしい。
ロープウェイや、「影絵の森美術館」もあり、大変賑やかな観光エリアという様相である。

水晶街道には、宝石を扱う店がたくさん

ほとんど誰もいない渓流沿いの遊歩道を歩いてきた身からすれば、ここだけ別世界のように見える。

実は、昇仙峡に車で来訪する場合は、この滝上の水晶街道のエリアに駐車場があるので、多くの人(車で来る人が多数派と思われる)は仙娥滝の上に到着していることになる。

しかし、車でやってきて仙娥滝だけ見てお土産を買って帰るというだけでは、あまり昇仙峡の魅力を堪能できるように感じないので、やはり渓流沿いをハイキングするのが大きな楽しみではないだろうか。

私が今回歩いた6㎞のモデルコースが長くて歩けないという人や、そんなに時間がない人は、
公式HPで「ちょっとだけいい運動を。ウォーキングコース」として紹介されている2.6kmのコースを歩くのもいいのではないかと思う。
覚円峰、仙娥滝といった昇仙峡の一番の有名どころを見ながらしばらく散策できるコースだ。

私は今回、健康な大人ひとりであり、天気もよかったので、渓流美を堪能しながらの6㎞のハイキングはちょうどよく、とても気持ちがよかった。
おまけに、この時期は遊歩道を歩く人も多くなく、実に静かで、自然の素晴らしい景色と向き合いながら心を空っぽにして歩くことができた。
都会で満員電車に詰め込まれる日々からしばし解放され、きれいな空気の中でリフレッシュできたという感覚だ。

紅葉の時期にはとりわけ美しい景色を見せる昇仙峡ではあるが、当然そのシーズンには多くの人が訪れて混雑するので、それ以外の時期に訪問して、心静かに自然美を嚙みしめるのもとても価値ある体験だと思うのだが、どうだろうか。

・・・ということで、これで本稿を終えられれば実にきれいな締め方なのであるが、私にはこの後、また6㎞の道のりを歩いて元来たバス停へ戻るというミッションがあるのだった。
帰りばバスで、・・・ということなら、滝上のエリアでゆっくり食事をしたり、宝石を見て回ったりする時間もあっただろうが、何しろ先はまだ長いのである。コースの終着点で早々に折り返し、来た道を引き返したのであった。

気持ちよいハイキングとはいえ、さすがに倍の距離を歩くと、なかなか大変である。
いい運動になったな~、などと言いながら、少し足の裏が痛い。
現実的には、バスの便が復活する4月以降をオススメするというのは、そういう次第である。

昇仙峡は、まるで秘境のような切り立った奇岩の景観が楽しめるにもかかわらず、甲府からバス30分という気軽なアクセスで行ける場所にある。
自家用車か公共交通機関か、どんな天候か、状況に応じて色々なコースのオプションがあるのも訪れやすい。

都会の喧噪を離れ、四季折々の自然を心静かに堪能したいという人は、非常にオススメできる場所なので、
紅葉時期以外にも、ぜひ出かけてみてはいかがだろうか?

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