<その1>から続く
第2章:火山活動のダイナミズム
・必見スポット、中岳火口
【注意!】
2026年1月に発生した遊覧ヘリコプター事故の捜索活動のため、2月18日現在、中岳の火口見学はできなくなっている。見学再開の時期は未定。本記事は、事故前の状況をもとに記載している。
前述の通り、阿蘇は過去の火山活動により形成された地形だ。
そして、今なお活発な火山活動が続いている。

その大地の息吹を目の当たりにできるのが、「中岳」の火口である。
噴煙を上げる火口を間近に眺めることができるので、阿蘇に行ったらぜひとも訪れるべき場所である。
一方で、中岳の火口には立ち入り規制がされることもあり、見学には、ややハードルがある。下に中岳火口の規制についてまとめているのでお読みいただきたい。
私が2023年に阿蘇を訪れたときは、中岳火口に行くつもりが、立ち入り規制の関係で到達できなかった。
火口に至ったのは、2025年4月に再トライしたときだ。
その際も、当初は規制で火口に至ることができず、しばらく待機して、ようやく規制解除により見学することができたのだった。

草千里から山上に向かうと、バスの発着する「阿蘇山上ターミナル」があり、休憩所や駐車場が整備されている。
ここから先は有料道路「阿蘇山公園道路」となっており、規制中はこの道路が封鎖される。通行には普通車で1,000円支払う必要があり、これが事実上の加工見学料金と言える。
火口に着いて車を降りると、火山らしい硫黄っぽい匂いが風に乗って漂ってくる。刺激臭で少々咳き込むような感じもある。
中岳の火口には、常時、有毒な火山ガスが発生している。そのため、風向きによっては有毒ガスの濃度が高まり、見学が規制されるのだ。
阿蘇山火口規制情報には、「ぜんそくの方、気管支に疾患のある方、心臓に疾患がある方、体調不良の方の火口見学を禁止しています」と明記されている(該当する方はご注意ください)。
火口周辺には緊急避難用の頑健なシェルターがいくつも建っており、活動中の火山なんだなという緊張感を新たにする。

私は約20年前にも中岳の火口に来たことがあるのだが、そのときの記憶と比較すると、
火口のくぼみ(お釜のようなところ)にたまっている水(湯だまり)が、ずいぶん減っていると思った。
昔の記憶では、もっとなみなみと、エメラルドグリーンの水がたたえられていたような気がするのだ。
今回見た火口の湯だまりは、くぼみの底の方に少量溜まっている感じで、もくもくと大量に吹き上がる噴煙によって、水面は大半覆い隠されているような景色であった。

調べてみると、湯だまりは、火山活動にともなって、増えたり、消失したりするらしい。
火口規制情報のWEBサイトには、過去の河口の写真ギャラリーもあり、変化する様子がよくわかる。

湯量が多い時期の火口の様子。火口規制情報のWEBサイトからお借りしています。
まさしく、阿蘇山は、「生きている火山」なのだと思った。山の姿は、日々、刻々と変わっているのだ。
火口からは白い噴煙が途切れることなく激しく吐き出され、空高く上っていく。
荒々しい岩肌が火山活動の歴史を想像させる。
昔の記憶にある「エメラルドグリーンの水に満ちた火口」とは少し違ったが、
この地球の大地が呼吸する様子を直接目撃しているようなダイナミックな景色に圧倒された。
ここであらためて、中岳火口の見学に関わる2つの規制についてまとめておこう。
【注意】前述のとおり、2026年1月に発生した遊覧ヘリコプター事故の捜索活動のため、2月18日現在、中岳の火口見学はできなくなっている。見学再開の時期は未定。本記事は、事故前の状況をもとに記載している。
〇噴火警戒レベル
火山活動の状況に応じて、警戒のレベルを5段階に区分して発表する指標である。
静穏な状態であれば「レベル1」で、火口見学が可能だが、火山活動が活発化すると、「レベル2」以降に引き上げられる。
「レベル2」以降になれば、火口付近への立ち入りは禁止され、見学はできない。
この「噴火警戒レベル」は、おおむね数ヶ月単位で推移するものであり、毎日コロコロ変わるようなものではない。
例えば、2026年2月16日現在、阿蘇山の噴火警戒レベルは「1」となっているが(気象庁:阿蘇山の活動状況)、
2025年7月4日~25日までの間は「レベル2」が発表されていた。
〇火山ガスによる立ち入り規制
先述したように、火口付近は有毒ガスが発生しているので、風向きによって火口付近への立ち入りが規制される。
立ち入り不可になると、火口までの有料道路「阿蘇山公園道路」が封鎖され、通行できなくなる。
この規制については、天候によるので、1日の中でも頻繁に変動する。
「さっきまで行けたのに、規制がかかってしまった」なんてこともある。
こまめに規制状況のウェブサイトをチェックする必要がある。
私が2025年4月に訪れたときは、阿蘇山上ターミナルまで行ったものの、規制中だったので、しばらく待機して、規制解除のタイミングを待って見学することができた。周辺にも同様に、規制解除を待っている観光客がたくさんいた。
到着時に規制がかかっていても、風向きの変動によっては、しばらく待てば通行できる可能性がある。
そのため、火口見学を計画する際は、ある程度時間に幅を持たせてスケジュールを組んでおき、
規制の状況をリアルタイムで確認しながら、周辺の草千里等の観光と組み合わせつつ
行けるタイミングを狙うというやり方がよいと思う。
あるいは、旅行日程中に予備日を設けておくのもアリだろう。
(ガチガチのタイムスケジュールを組んでしまうと、その時間に規制がかかっていた場合に見学できずに終わってしまう)
しかし、そうは言っても、縁がなくて火口見学ができないこともある。
みんな、色々なスケジュール制約の中で旅行しているのである。
そんなときは(というか、火口が見学できた場合でも、追加で、)阿蘇神社に行こう。
中岳から下山し、火口原にある市街地に向かえば、そこに阿蘇神社がある。
・二千年の歴史「阿蘇神社」
阿蘇山の火口は古来から阿蘇神のご神体とされてきたそうで、
阿蘇神社にお参りすれば、阿蘇山の火口を拝んだも同然(?)である。
阿蘇神社は、2016年4月の熊本地震で、甚大な被害を受けた。
私が2023年1月に訪問したときには、社殿は修復されてすっかりきれいになっていたものの、入り口の楼門はまだ修復工事の途中で、楼門の写真を貼った幕がかけられていた。
それが、2025年4月に再訪したら、昔の姿を取り戻した立派な楼門ができあがっていた。
2年ぶりに訪れてその姿を見ることができ、私もとても嬉しく思った。



阿蘇神社HPをみると、「阿蘇神社の創建は紀元前282年と伝えられ、約2300年の歴史を有している」とのことであり、驚くほど長い歴史を有する由緒ある神社なのである。
ご祭神は、阿蘇を開拓した健磐龍命ほか。宮司は古来から阿蘇氏によって代々世襲されているそうである。

阿蘇神社の面白い特徴は、参道が横向きであることだ。
ふつう、神社の参道は社殿に向かってまっすぐに伸びている。それが阿蘇神社の場合、社殿に並行の向きになっているのだ。だから門前町の商店街も、その横向き参道の方向に合わせて横向きに形成されている。

この横向き参道については、ネットを調べていたら、阿蘇神社の北に位置する「国造神社」(健磐龍命の子である速瓶玉命等をまつる)から、阿蘇山・中岳を通り、南阿蘇に位置する白川水源(第3章で紹介)まで引いた直線の上に位置しているのだ…などという説明を見かけた。
まあ、そういう説明は、後付けと言えばそうなのだろうと思うが、試しに地図上に線を引っ張ってみると、大体そういう位置関係になっていることが分かる。

古代の人々は噴煙を上げる阿蘇山を眺め、畏れと敬意を抱きながら山をまつり、この2つの神社を作ったのだろう。
祖先たちが受け継いできた信仰に思いをはせながら手を合わせると、なんだか人知を超えたパワーの一端を感じられるような気がする。
この阿蘇神社は、同時に、阿蘇における「水の恵み」を感じられる場所でもある。
先ほど記載した「横参道」には、湧き水がふんだんに流れる手洗い場が設置されており、参道から続く門前町には、「水基」と呼ばれる、湧き水の水飲み場がたくさん設置されているのである。
阿蘇は火の国であるとともに、水の国でもある。
ここから先、第3章は、3つめのポイント「水の国」の紹介に移ろう。
<その3>に続く



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