富山県が、日本屈指の昆布消費量を誇る県だということを私に教えてくれたのは、
会社の後輩で富山県出身の高山くん(仮)であった。
その当時(10年以上前)、彼は入社したばかりの溌剌とした若者だったが、
驚くほど人懐っこいキャラクターで、仕事に関係ないこともよく話してくれた。
どういう文脈だったか、あるとき彼が、「富山県は昆布の消費量日本一なんですよ」と言った。
私はいい加減な知識で、「あれ、昆布って沖縄とかが消費量多いんじゃなかったです?」などと答えた。
すると彼は、
「それは違いますよ!昔は沖縄も多かったらしいですけど、今、1位なのは富山です」
と教えてくれた。
「富山には、北前船が北海道から昆布を運んできて、それを使った料理がたくさんあるんですよ」
…なるほど。
確かに、昆布は北海道から日本海を通って北前船で大阪や京都に運ばれ、消費されていたのだから、
その中継地点となる富山にも、昆布が大量にもたらされ、食文化に根付いたということだろう。
現時点でのデータを調べてみると、
「家計調査」に基づく都市別の昆布消費額トップ3は以下の都市である(※)。
1.富山市 1,624円
2.福井市 1,327円
3.山形市 1,192円
(全国平均:730円)
出典:「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2022年~2024年平均)」
※なお、同じ家計調査のデータから、消費額ではなく消費量のランキングをみると、1位:盛岡市、2位:青森市、3位:山形市となっており、このランキングでは富山市は7位である。消費量以上に消費額が多いということは、富山市民は単にたくさんの昆布を食べているということではなく、「昆布にお金をかけている」ということになり、上等の昆布をたくさん消費している?ということかもしれない。
上記によれば、富山市では実に全国の2倍以上を昆布に支出しているわけだから、
確かに富山は昆布王国ということになる。
さて、私は先日、東京メトロの有楽町駅に向かっている途中で、ふと富山県のアンテナショップの前を通りかかった。
そしたら、店の入り口に目立つように置かれているある食品に、視線が釘付けになった。
それは……「昆布パン」!!
富山県のシルエットを背景に「富山の昆布パン」という極めて素直なネーミングが書かれたパッケージが、
たくさん並んで売られていた。

私は思わず立ち止まった。
「昆布…ぱん…だと…!?」
昆布もパンもごく普通の食品だが、それを組み合わせるか!?普通!?
なんかすごく素朴な感じのパッケージデザインなのだが、
その親しみやすい見た目に反して、「パンに昆布を練り込む」という作りのインパクトはなかなか強い。
…いや、攻めすぎだろ。
とにかく見た瞬間、「これは買うしかない」と天啓を受け、買って帰った。
あらためて見ると、外観もなかなか特徴的である。
細い三角形のパンが4切れ入っており、組み合わせてぴったり長方形になるという形だ。
ビジュアルがもう昆布感満載で、白い生地にたくさんの切り昆布が練り込まれているのが分かる。

私はかつての高山くんの言葉を思い出していた。
いや、富山県民、昆布愛強すぎだろ…
いくら昆布好きだからって、パンに入れる?パンに…
どんな味なのか、想像もつかない。
裏の原材料表示を見ると、「菓子パン」とあり、原材料は「ミックス粉」が最初に書いてあるので、
もしかすると、ほんのり甘い生地に、塩気のある昆布を組み合わせた、みたいな味…??
などと想像を膨らませながら、さっそく開封。

一切れ取り出すと、明らかに分かる昆布の風味が漂ってきて、
「いやもしかすると、名前のインパクトだけで、言うほど昆布味しないのかも」などという予想を完全に覆している。
昆布である。…きわめて昆布である。

口に運ぶと、想像していたのと少し異なる味や食感が私に新鮮な驚きをもたらした。
食感は、「ふわっと」ではなく、「もちっと」が近かった。
そして味は、意外にも、シンプルでアッサリしていた。
甘みはほとんどない。塩味がちょうどよく効いており、そこに昆布の風味が混じっている。
「これは菓子パンではないな」と私は思った。
私の中では「食事パン」のカテゴリーに該当した。
つまり、料理に合わせて食べる、フランスパンとかフォカッチャとか丸パンとかの種類と同じような系統に感じられる。
いわゆる食事パンは、料理と合わせやすいよう、シンプルで主張の強すぎない味になっているものが多いが、それと同じ方向性を感じた。
食べた瞬間「激ウマ!」というようなインパクトがあるわけではないが、
あっさりして癖がなく、とても食べやすい。何かと一緒に味わいたい。
そんな感じだ。
そして、強く思った。「これは焼くべき!!」
さっそくトーストした。そうしたら、めちゃくちゃアタリだった。

トーストして、少しこんがりさせたら、まさに「外はカリっと、中はモチっと」という歯ごたえになり、
とてもおいしい。焼きたての香りに昆布の風味が混じる。
再度パッケージを見たら、富山県産の米粉が使われているのだということが分かった。
なるほど、「モチっと」の正体はこれか。
昆布の風味と、米粉の「モチっと」が口の中で混じり合い、
その結果、この「昆布パン」は、パンと餅との微妙な狭間を漂うような、不思議な独特の食べ物のように思えてきた。パンでも餅でもない、新次元の何か…。
とてもおいしく食べ終わった。
「いったいどんなパンチの効いた味なんだ!?」と身構えていた事前の感覚に反し、
食べ終わった感想は「シンプルでアッサリしてて、おいしい。食べ飽きない。焼くと最高」だった。
これはまた見かけたら買うと思う。偶然の巡り会いに感謝だ。
後で調べてみたら、「トーストしたらおいしい」ということのほか、「チーズを乗せて焼くとおいしい」というのもあった。次に買ったらチーズだな。
富山県内ではもちろん売っていると思うが、私は東京のアンテナショップで入手したので、気になる人はぜひ!
そして、後日。
そんな出会いが嬉しかった私は、前述の高山くん(仮)にその話をした。

高山くん:
懐かしいですね~。小さいときによく食べてました。けっこうおいしいんですよ。

そうそう、何度も食べたくなる味ですよね。富山の昆布愛を感じる…。

高山くん:
ちなみに、富山では、カマボコも、板付きのやつじゃなくて、昆布巻きカマボコが通常なんですよ。板付きのやつは、僕、大学行って初めて食べました。昆布巻きカマボコも、機会があったらどうぞ!
高山くんから、新たな富山グルメ情報を入手してしまった。
昆布巻きカマボコを調べてみると、富山県農林水産部のWEBサイト「越中とやま食の王国」に
「とやまの昆布特集」として、画像のようなカマボコが掲載されている。

なんと、板につけず、昆布でカマボコ生地をロールケーキのように巻いてある。まるで「よいとまけ」みたいなビジュアル(←?)。なんという贅沢な昆布の使い方…!!
もともと私は練り物大好きである。これはいずれ必ず食べなければと思ったのだった。


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