冬の足音が近づくこの時期。
全国各地で紅葉が見ごろを迎えている。
東京都内にも著名な紅葉スポットが多数あり、
例えば「ウェザーニュース」の「東京の紅葉名所ランキング」では、
神宮外苑のいちょう並木、昭和記念公園、高尾山、新宿御苑などが紹介されている。
本記事では、そういうランキングではあまり目にしないものの、
和洋折衷という特有の魅力で他とは少し違う紅葉が楽しめる「旧古河庭園」をご紹介したい。
旧古河庭園——大正の息吹を感じる和洋折衷庭園
旧古河庭園は、東京都北区にある都立庭園である。
大正時代に、古河財閥の三代目当主であった古河虎之助によって造営されたもので、
「大正初期の庭園の原型を留める貴重な存在」とパンフレットに記載されている。
同じパンフレットから引用すると、
「武蔵野台地の斜面と低地という地形を活かし、北側の小高い丘には洋館を建て、斜面には洋風庭園、そして低地には日本庭園を配したのが特徴」
とのことで、和洋の両方の庭園を同時に楽しめる場所である。

洋風庭園および洋館は、鹿鳴館等の建築を手がけたイギリス人建築家ジョサイア・コンドルが設計しており、
日本庭園は、平安神宮等を作庭した京都の庭師、小川治兵衛が手がけたというから、
東西のビッグネームによる魅力的な庭園が同じ敷地内に同居しているということになる。
そんな旧古河庭園では、この時期、
和風庭園の紅葉と、洋風庭園のバラの花とが同時に楽しめるという
とても贅沢な景観を堪能できるのだ。
レンガ造りが美しい洋館と、バラの咲き匂う庭園
旧古河庭園の敷地に足を踏み入れると、まずは高台のエリアに、石造りの洋館がどっしり構えており、
シックで美しい外壁の様子が目を引く。
その洋館を取り巻くように、洋風庭園が増設されており、
幾何学的な配列ですっきりと刈り込まれた植え込みの中に、
たくさんの色とりどりのバラが植えられているのだ。
↓シックな外壁が美しい洋館

↓洋館を背景に洋風庭園が設えられている

バラの季節と言えば5~6月をイメージするが、ここには秋咲きのバラも多数植えられていて、
紅葉が深まるこの時期にも、大輪のバラが咲き誇っているのを見ることができる。
↓洋風庭園で見ごろを迎える大輪の秋バラ。色のバリエーションも豊富




晩秋の風情に満ちた和風庭園の紅葉
洋風庭園のある高台からは、低地にあたるエリアに造営されている和風庭園の全景が見渡せる。
こちらは晩秋の日本の風景という雰囲気そのもので、着々と木々の色づきが進んでいる。

前景に赤く色づいたモミジ、その背景にバラが咲き誇る洋風庭園と瀟洒な洋館が見通せるという景観は、
この庭園ならではのもので、なんだか少し不思議な感じがする。

では、坂を下りて、低い土地のほうにある和風庭園に向かってみよう。
和風庭園は、心字池を中心にしてたくさんの木々を周辺に配置した作りで、
木々の間のあちらこちらに、雪見灯籠をはじめとするいくつもの大きな灯籠が置かれているのが特徴だ。
↓心字池を囲む和風庭園。雪吊りも行われ、冬の準備が進む。
果たして都内で雪吊りが必要なのかな?という疑問も抱くのだが、
おそらくこれも季節ごとの和風庭園の景色を作り出すための作業なのだろう。

和風庭園に設けられた灯籠にはいくつかの種類がある。これがいちばん大きな雪見灯籠

それぞれの灯籠の形状について、簡単な解説もついている。

和風庭園では、紅葉が進み、色づいた落ち葉が地面に降り積もる。


和風庭園の端には、十数メートルの落差を持つ「大滝」という滝がしつらえられている。
この滝は、園内のもっとも勾配が急なところをさらに削って断崖とし、
深山幽谷の趣を作り出したものであるという。
滝の周辺も木々が色づいて、晩秋の山中のような風情が漂っている。

和洋の不思議な調和が醸し出す贅沢な景観
心字池の周辺をぐるりと回って散策したら、あとは滝の裏側に上って、
再び洋館のある高台のエリアに戻ってくることができる。
階段を上がった先の芝生広場には、紅に燃えるようなモミジが一本植えられていて、
同じ視界の中には、対照的な雰囲気を持つ石造りの洋館が映る。
この邸宅の主は、土地の特徴を巧みに利用し、和洋それぞれの優雅な庭園を築いて、
四季折々にその魅力をふたつながら堪能していたのだろう。
なんとうらやましいことではないか。
冬を待つこの時期に、詫び寂びを感じる日本らしい紅葉の風情と、
色とりどりの鮮やかなバラが咲き匂う華やかな庭園の風景と、
}両方を同じ場所で堪能できる。
それが「旧古河庭園」だった。
旧古河庭園では、11月8日(土)~12月7日(日)まで、
「紅葉とバラ、和と洋の秋」と名付けられたイベントが実施されている。
この機会にぜひ足を運んでみては?



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