食洗機を普及させるべく、そのメリットを訴える記事(こちら)を書いた。
ただ、そうは言っても、「欲しいけど、置き場所ないんだよ」という人は多いのだろうと想像している。
実際、使用歴9年近くになる私も、最初に食洗機を設置したときは置き場所の問題に直面した。
しかし、置こうと思えば、どうにかなるものだ。
この記事では、私が約9年前に、狭い部屋の一角に食洗機を無理矢理設置したときの経験談というか、「奮闘記」というべきものを書いている。
社運ならぬ家運をかけた一大プロジェクトとして、苦闘の末に設置に至った(?)記録である。
これから購入を検討される方がイメージしやすいよう、実際の設置に至るまでの手順を時系列で記載したので、「こういうふうにしてる人もいるんだな…」という実例としてご覧いただければと思う。
※以下では、もっぱら、(キッチンと一体化している「ビルトイン型」ではなく、)賃貸住宅等でも使える「据え置き型」の食洗機のことを扱っているのでご注意いただきたい。
0.食洗機が切実に必要
9年前。長男が生まれ、育休を取っていた私は、長男が7ヶ月のときに職場復帰した。
仕事を続けながら、家事・育児を回していかなければならない毎日の中で、いかに家事を効率化するか、常時考えていたが、そのひとつが食洗機の導入だった。
長男は離乳食の練習の真っ最中。使う食器も増えつつある。今後は、夫婦の毎日の食事に加え、長男の食事も作って食べさせなければならない。食器洗いから解放されたい。というか、食器洗ってる時間とかないよマジで。
1.まずはリサーチ:機種や設置条件
設置を検討し、調べてみると、当時、食器洗い機については、ほとんどパナソニック一択という状態だった。
パナソニックは日本の狭いキッチンにも食洗機を普及させることを目指して、食洗機の小型化や、各種のキッチン水栓に対応した多種の分岐水栓の開発等に奮闘した歴史を持っており、そのドラマは「プロジェクトX」においても取り上げられている(…らしいと、夫が教えてくれた)。
パナソニックの食洗機には、現在、分岐水栓タイプとタンク式があるが、当時はたぶん分岐水栓型しかなかった(と思う)。そのため、設置するには、
・置き場所の確保
・分岐水栓の取り付け
という課題をクリアする必要があることがわかった。
2.分岐水栓をつけられるのか、調査する
①分岐水栓をつけていいのか?管理会社に問い合わせ
分岐水栓とは、キッチンのシンクの水栓の根元に取り付けて、水道の水を食洗機のホースに供給するためのルートを作るパーツのことである。

元の水栓をいったん取り外して、分岐水栓を水の通路の途中に挟むような形で組み込み、再び元の水栓を取り付ける。不要になれば取り外し、元に戻せる。
シンクに穴を開けるような不可逆的な工事は不要である。
とはいえ、賃貸住宅なので勝手にやると何かあったときにまずい。
管理会社に確認すると、「原状復帰できるのであればつけてもよい」との回答だった。
②適合する分岐水栓を探す
では、自宅の水栓に適合する分岐水栓はあるのか?
パナソニックのWEBサイトで、自宅の水栓の型番を入力すると、該当する分岐水栓が検索できる。
水栓の型番は、根元を見ればシール等があって記載されている。
もし分からない場合は、分岐水栓を製作している「ナニワ製作所」のサポートセンターに写真を送って確認してもらう方法もある。
我が家の場合、検索してみた結果は微妙だった。
該当する分岐水栓は一応、示されたのだが、「メーカー仕様によって、同一品番でも取付できない場合がある」と記載されていた。
そこで、分岐水栓を製作している「ナニワ製作所」のサポートセンターに問い合わせをしてみたら、
「当水栓(我が家のキッチンの水栓)は、外観がまったく同じで新旧タイプが存在し、1996年以降の新タイプであれば適合する分岐水栓があるが、1995年以前の旧タイプの場合、取り付けられない」「新旧タイプは、外観も内部構造も酷似しているので、製造年が分からない場合、取り付けしてみないと判断できない」との回答だった。
我が家の水栓の製造年はいつなのか?管理会社に再度問い合わせをした。
回答は「製造年は分からないが、住宅が1994年築であることから、1995年以前の水栓の可能性がかなり高い」とのことだった。

な、な、なんということだ…!!!
ここで、第1の巨大なハードルが出現した。
「適合する分岐水栓がない(可能性が高い)」
分岐水栓がつけられなければ、あとはキッチンを工事する方法しかなく、賃貸では絶望的だ。
③問い合わせ、再チャレンジ
しかし、諦めきれなかった。何しろ、分岐水栓を検索するページを見れば、ものすごくたくさんの種類の分岐水栓が存在しているのである。こんなに種類があるのに、たまたま自分の家のごくありふれた(ように見える)水栓が、対象外なんてことがあるだろうか?
往生際が悪い我々は、今度はキッチンの水栓の製造元と思われる会社に連絡をしてみた。
写真を送り、取り付けられる分岐水栓はないか?と聞いてみた。
そうすると、「シリアル番号を見る限り2000年製造と推測します。適合するのは××の水栓です」と教えてもらえた。
管理会社が認識していなかっただけで、キッチンのリニューアル等が実施されていた可能性があるようだった。
それならいけるかも……!!
とはいえ、新旧タイプの外観は同じとなれば、実際取り付けてみるまで、確証は持てない。
これはちょっとバクチだなと思った。
3.本体をどこに置くか、検討する
並行して、置き場所問題について検討を進めた。
①製品の寸法を自宅のキッチンに照らし合わせる
パナソニックの商品ページには、詳細な寸法が記載されている。あわせて、食洗機の周辺や上部にどれくらいの余白を取らなければならないかも説明されている。
当時、我々が住んでいたのは、2DK、40㎡程度の賃貸住宅だった。
下の写真はそのキッチンである。実に狭い。
しかし、2DKの賃貸住宅では、キッチンがこの程度の広さなんてこと、よくあるのではないだろうか。

シンク横の空きスペースは、向かって右側の部分のみ。大きさとしてはまな板が置ける程度であり、そのすぐ右はコンロである。
計測してみたら、この場所への設置は絶望的なのが分かった。面積がまったく足りない。
正面向きに置けないのはもちろん、シンクに張り出すように横向きに置けないかとも考えたが、どの向きでも無理だった。幅も奥行きも高さも、全然足りない。
当時のパナソニックの食洗機は、ファミリー向けの大型の機種と、収納点数が少ないコンパクトな機種とがあったのだが、仮にコンパクトな機種を選んでも、面積が足りないのだ。
仮にもし、何か無茶な方策によってこの場所に無理矢理置いたとして、コンロの真横を塞ぐ形になれば、コンロの機能が阻害される。そして、シンクを大きく覆う形になれば、シンクが使えなくなる。
コンロやシンクが使えないキッチンで食洗機だけがあったとしても、どうしようもないだろう。

ああぁぁ…!!もはや、これまでか……!!!
第2の巨大なハードルが待っていた。
キッチンに、置ける場所がない…
②設置場所、再チャレンジ
そこで、シンク横ではない場所に置く余地があるかどうか考えてみた。
給水と排水の問題をどうにかすれば、必ずしもシンクのそばに設置する必要はないんじゃないか?
考えた結果、キッチン横のスペースにメタルラックを設置してそこに食洗機を置き、
給水ホースを長く伸ばして給水し、バケツに排水するという設置方法を考えた。
給水ホースが水栓から設置場所まで届くか、ホースの長さを調べたところ、給水ホースはけっこう長かったので、伸ばせば届くことが分かった。
排水については、どれくらいの水量が排水されるかが重要だ。製品スペックを見ると、使用水量が約11ℓとあったので、12ℓのバケツを置くことでまかなえると考えた。
具体的には、下図のような設置方式である。これを、キッチンの脇の壁面に接するように設置することにした。

4.いざ設置…!!
①Do It Yourself!
上記の通り、設置にあたっては、
「分岐水栓が本当に適合するのか?」というバクチ要素と、
本来想定されてない設置場所(シンク横ではない場所)に設置するというムリヤリ要素があったため、
食洗機を購入して配送業者にそのまま設置してもらうという流れは難しいと考えた。
いざ現場に来てもらって、水栓ハマりません、となったらどうしようもない。
さらに、シンク以外の場所にホースをムリヤリ伸ばして設置するような方法は、製品の本来の使用方法ではないと思われ、そのような設置を業者が受けてくれるかも分からない(責任取れませんと言われそう)。
つまり、うまくいくかも分からない方法である以上、自己責任である。自力で取り付けをすることにした。まさにDIY。
②分岐水栓の取り付けに挑む
分岐水栓がハマるかどうか分からなかったので、本体購入前に、まず分岐水栓を購入し、取り付け作業を実施した。
適合する分岐水栓の取り付けにあたっては、水栓のナットを外すための「モーターレンチ」が必要と書いてあり、これは家にはなかったので、新たに購入した。
分岐水栓の説明書に記載されている手順を読む限り、ちょっと複雑そうではあるものの、専門技能を要する作業ではなさそうだ。
それでも水道部分をイジるので、ちょっとドキドキする。
休日、丸一日かけて、夫婦2人がかりで、取り付けに没頭した。
説明書どおりに、まず水道の元栓を閉め、水流を断ってから、現在の水栓を一部取り外す。
その後、購入した分岐水栓を取り付けていくのだが、図を見ながら実施しても、なかなか簡単にスポっとはまらない。
何がダメなのかな?もっと力任せに押し込む必要があるのか?などと夫婦2人で試行錯誤しながら奮闘し、途中、「やっぱりハマらないのかも…」と不安になりながら、どうにかこうにか取り付けが完了した。
その間、0歳の長男はビービー泣いたりしていて、大変だったが、やり始めた以上はその日のうちにやりきらなければならないので(そうしないとキッチンが使えない)、
ときには泣いている長男をしばらく放置して、もう勢いと掛け声だけでひたすら突撃を繰り返し、気づいたときにはどうにか分岐水栓がついていたのだった。
③いよいよご本尊(本体)を鎮座させる
一家総出?の奮闘の末に、ついに最難関の分岐水栓がクリアできたので、その後、晴れて本体とメタルラックを購入した。
分岐水栓が取り付けられていれば、本体の設置はそんなに難しくない。
組み立てたメタルラックに、本体を搭載し、電気とホースを繋ぐだけだ。
とはいえ、変な場所に設置しているので、配線の問題は生じる。
まず、給水ホースは、キッチンの壁を這わせながら長く伸ばして、食洗機本体に繋がなければならない。
ホースを壁に固定するためにどうしようか考え込んだが、ちょうどいいやり方があった。
吸盤フックをキッチンの壁に取り付け、そのフック部分にホースを引っかけると、ちょうどよい具合にホースが壁に固定できるのである。

そして、食洗機にはアース線がついているが、これも設置場所の近くにはアース端子がないため、
床の端っこを這わせて、冷蔵庫の裏にあるアース端子に接続した。
床にアース線がそのまま伸びていると危険なので、ホームセンターなどで売っている配線カバー(下の画像)で上から覆い、固定。
排水ホースは、前述の通り食洗機の下にバケツを置いて、そのバケツの中に水を流すよう、バケツ内側に吸盤で貼り付け。
とうとう、我が家の食洗機置き場ができあがった。

ついにここまで来たよ…!!
最初に稼働させてみたときは、ドキドキした。
問題なく給水されることが分かって、喜びの声を上げたものだ。
そして、排水が問題ないかも、ハラハラしながら見守った。
本当にバケツに溜まる量の水で済むのだろうか?大量の水が出て、あふれかえったりしないだろうか?
最初に洗うときは、自宅で様子を見守った。
これも規格通りで、食器洗いを終えて出てくる水は、わずか10ℓ前後である。バケツに少しずつ溜まっていく。
5.食洗機のある生活
こうして、「食洗機がある生活」を手に入れたわけだが、無理のあるやり方で設置している以上、問題が全然なかったわけではない。
排水は、毎回、バケツにためるわけだが、
10ℓ前後の水がタプタプに溜まったバケツをラックの底から持ち上げて、中身の水をジャー!!とシンクに流す作業が毎回生じる。
重いし、こぼしそうだし、なかなか厄介な作業である。
とはいえ、この作業が嫌だという理由で食洗機の仕様を控えるなどということはなく、食器洗いをしなくて済むメリットの方がずっと大きかった。
バケツ排水方式は、ごくたまに水漏れ問題も起こした。
大きな事故にはならなかったが、稼働している途中でホースがバケツから抜けて、一部の水が床にこぼれてしまうという事態が数回起こった。
在宅時なら気づいて直せるが、不在時に回していると、帰宅したときに床がビチャビチャということになる。
そのため、バケツの周りには常時、雑巾代わりのバスタオルを大量に敷き詰めて万一に備えていた。
まったく人様に見せられるような状態ではなかったわけだ。
しかし、食洗機の食器洗い能力自体は、何の問題もなく稼働した。
毎日、朝夕、家族の食器をまとめて洗ってくれた。
食洗機を置いたラックは、食器棚の隣にあったので、洗い終わった食器はスムーズに食器棚に入れられるし、あるいはそのまま食卓(ちゃぶ台)に持って行くこともできる。狭いダイニングだから、動線もシンプルだ。食器洗いはとても楽になった。
その後、次男の誕生を機に、もう少し広い住居に引っ越しをして、食洗機もめでたくシンク横に置けることになった。
その分、調理スペースは激減しているが、食器洗いから解放された生活を続けられるメリットは大きい。
先日、その1代目食洗機が故障して買い換えたことは、この記事にも書いたとおりだ。
我が家にとって、食洗機はもはや洗濯機と同レベルで生活に欠かせない家電になっている。
食洗機が日本中で、賃貸住宅も含め、もっとずっと当たり前の選択肢になることを願い、参考になればと思って、自分の経験談(というか苦労話)を書いた。
念のためご注意いただきたいが、ここで説明した設置方法は、メーカーが提示しているようなものではなく、あくまで苦し紛れに自己責任でやったものである。このやり方を推奨するという意味ではない。
工夫・苦労してでも、設置する意味はありますよという意図である。
・エピローグ
♪ヘッドラ~イト、テールラ~イト…
かつて、賃貸住宅の狭小キッチンに挑み、執念と激闘の末に食洗機DIYを成し遂げた、名もなき生活者がいた…
そしていま、彼らの願いがそうであったように、食洗機の選択肢は、この国のそこかしこで、大きな広がりを見せつつある…
すべての人々が食器洗いから解放される日を願い、彼らは今日も食洗機に汚れた皿をねじ込み続けている…
…というわけで、最近はタンク式の食洗機も選択肢が多くなっており、より容易に食洗機を導入できるようになったと思う。
さあ、食器洗いから解放された日々へ、あなたもどうぞお越しください!



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