冬の真っただ中に、季節外れの話題で恐縮だが、
我が家にたくさん積み重ねられている事件簿のうちのひとつを紹介したい。
それは、ある6月の、大変蒸し暑い夏の日のことであった。
私が買い物をして帰ると、夫(ヨウちゃん)が、ミニトマトの苗が届いたよというのである。
少し前から、長男(ひーくん)が小学校でミニトマトの苗を育てていたが、どうもうまく育っていないようで、夫はとても心配していた(彼は二人の息子を溺愛している)。
学校のミニトマトがダメになってしまったらかわいそうだ、自宅で育てられるように買ってやりたい、と過保護なことを主張して、先日、アマゾンで注文するとかなんとか言っていたのだ。
しかし、アマゾンで植物の苗なんか買えるの?と疑問で、本当に注文したんだなと私は驚いていた。よくそんなの発送してくれるなと。
へーそうなの、と私は答え、そして、ペラっと放り出してあった納品書を見て、…驚愕した。
ななななななんと2,980円である!!!
「トマトの苗を!?2,980円で!?買ったの!?」
と私は言った。
「苗を!?買ったの!?2,980円で!?」
「苗を!?」
「苗を!?」
5回くらい言った。いやたぶんもっと言った。あまりの衝撃で何度も言った。
そうだよ。と、こともなげに、ヨウちゃんは言う。
「嘘でしょ!?嘘でしょ!?」
信じられない。桁がひとつちがう。
私のイメージでは、野菜の苗というのはホームセンターで100円かそこらで売っているものだ。
普段、苗なんか買わないから、さすがに昨今100円ではないのだとしても、いくらなんでも3,000円ってそれはないだろう。見たところ何の変哲もないミニトマトの苗である。
(なお、この後、プランターに植えたが、我々の扱いが悪かったせいか、ほとんど収穫できなかった)
「ふつう、ミニトマトの苗を3,000円で買わない」
「というか、野菜の苗とかアマゾンで買わない」
という感覚を彼はぜんぜん持ってないし、ちょっと調べてみようという意識もないのである。
自分の衝撃を伝えようとして、

例えば12円で売ってるうまい棒1本をね!それを500円で買いましたと!
うまい棒1本、500円出して買いましたって言われたような感じですよ!
その状況を想像してよ!
と、私は力を込めて訴えた。ヨウちゃんはボサっとした顔のままである。

うまい棒1本ですよ!12円だし、しかもどこにでも売ってるわけでわざわざ取り寄せる必要もないわけよ。コンビニで買えばいいわけですよ。
それをアマゾンで500円で買ったよと言われたらそりゃ衝撃でしょ!!

うーんどうだろう…そういうこともあるかもしれないよ。送料がかかるんだし

だから12円のうまい棒のために送料払わないでしょ!!コンビニ行くでしょ!!そういうことだよ!!

ホームセンター、近くにないしさ…

遠くてもホームセンター出かけるほうが断然安いわ!ほぼ95%送料の買い物って何!!

こないだハイジの村でみたバラの苗、3,000円くらいだったし、そんなもんかなと…
(注:この少し前に、山梨県にあるハイジの村に遊びに行ったことがあった)

だからそれはバラの鉢植えの値段なんだよ!
ミニトマトの苗と、なんかキラキラな名前がついてるバラの鉢植えが同じ値段のわけないだろ!!
ヨウちゃんが言うには、お金がどうとかではなく、息子がミニトマトを育てるという体験をできなくなってしまったらかわいそうだから、そのためなら多少高くても買ってやりたかったんだ、みたいなことなのである。
「いやあなたのお金だから、だから好きにすればいいんだろうけども!!」
と私は言った。
つい今しがた、自分が買い物に行って、数十円とかのことでああでもないこうでもないと考え、
少しでも節約をと値引き品を探し、たくさんの重い荷物を抱えて帰ってきたことの全てがものすごくバカらしいことのように思えて、その私の涙ぐましい努力はなんなんだよという気持ちになった。
…が、もうそれ以上言っても仕方がない。
「そもそも、苗ってアマゾンで買わないだろ…。せめてタキイとか見ろよ…」
「だってそんなの分からないし。とにかく早くしなきゃと思って」
「いやもうこれ以上言うのはやめよう…。あなたのお金だし。しかし私はショックすぎてちょっと…」
「そうかごめん。俺常識ないからな」
「知ってるよそれは…もうこういうの何回目だろうって感じだよ…」
「はるに聞いてから買えばよかったね」
私はショックから立ち直るため、血迷って「残業だ。残業しよう。」などと考えた。
お金のことで残念なことがあった場合、そんな迷妄的なことを考えて自分を慰めるしかない。
多少、大事なお金が失われたとしても、その分いくらか残業して取り戻そう。私は社畜。数時間、余分に働けばすむ話だ…そうだ大した話ではない…
我が家ではしょっちゅうこんな感じの事件が起こっている。
ある6月の大変蒸し暑い夏の日に、またひとつ事件簿が書き足されることになったのであった。
【注】もしかすると、ヨウちゃんが購入していたのは、何か特別な超高い品種のミニトマトなのかもしれない。実際、後日調べると確かにアマゾンでは超高級そうなミニトマトの苗が3,000円近い値段で売られている…。しかし、彼は別に超高い品種のミニトマトを買いたかったわけではなく、単に息子に苗を育てさせたかっただけである。ホームセンター行けよ。
「いやほんとそうだよ…私もあなたの買い物にむやみに口出したくないけどさ…」
「これからは聞くよ」
「せめて、いきなりそれ買うんじゃなくていくつか通販サイト比べてみようとかいう発想なかったの…?」
「アマゾンに出てたのがそれだったんだよ」
「いやアマゾンって出品偏ってることあるよ…。いきなりアマゾンにアクセスするのやめようよ…。大体、苗とかアマゾンで買わない普通」
「だって早くしなきゃと思って」
いつもこんなだ。私は相場より高いものをむやみに買いたくない。しかし彼にはそのような感覚がない。
「いやもうこれ以上言うのはやめよう…。あなたのお金だし。しかし私はショックすぎてちょっと立ち直れない」
「そうかごめん。俺常識ないからな」
「知ってるよそれは…もうこういうの何回目だろうって感じだよ…」
「咲に聞いてから買えばよかったね」
「いやほんとそうだよ…私もあなたの買い物にむやみに口出したくないけどさ…」
「これからは聞くよ」
「うん…せめて…せめて今後は、相場のわからないものはいったん調べよう。いきなりアマゾンにアクセスするんじゃなくて」
私はショックから立ち直るため、「残業だ。残業しよう。」などと考えた。
お金のことで残念なことがあると、大抵そうやって自分を慰めている。多少、大事なお金が失われたとしても、その分いくらか残業して取り戻そう。私は社畜。数時間、余分に働けばすむ話だ…そうだ大した話ではない…
ある6月の、大変蒸し暑い夏の日に、またひとつ事件簿が書き足されることになったのであった。



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