子育て当事者として、「少子化は止まらないだろう」と思う率直な理由~その1~

マジメ風味の話題

報道によれば、現政権の総合経済対策の一環として、
子供のいる世帯を対象に、子供ひとりあたり2万円を給付する予定なのだという。
私も二人の子供(9歳、3歳)を育てているので、この施策の対象になるのだと思われる。

あまりいい対策だとは思わない。

1回きりの給付だと効果は薄いと思うことや、子育てでいちばん困っているのはお金のことではない、
というのが理由だが、
それ以上に、子育てをする世帯に対する風当たりがますます強くなるのではという懸念が
心に重く垂れこめるのである。

この記事では、子育て当事者として少子化について考えることを書いた。
分量が多くなってしまったので、3回に分けている。
長いなあと思われるかもしれないが、切実な気持ちに基づいて書いたものである。

最初に全体(その1~その3)の目次をまとめておく。

1.深刻な少子化——子供たちの未来は

私の長男(ひーくん)が生まれた2016年のこと。
その年、ついに、生まれた子供の数が100万人を割り込んだことがニュースになった。
私が生まれた1985年には、143万人ほどいたのが、
息子の代には、なんと、ほぼ2/3の水準の人数になってしまったのだ。

赤ちゃんだったひーくんを見ながら、私は胸が痛いような気持ちになった。
「そうか、この子の仲間は、もう100万人もいないのか…」
この子がこれから生きていく社会は、厳しいものになってしまうかもしれない。

——それから6年。
次男(ふーくん)が誕生した。
このとき、事態はもっと深刻になっていた。
出生数は80万人を割った

(注)2016年の出生数:977,242人、2022年の出生数:770,759人
 出典:人口動態調査(年次別にみた出生数・出生率(人口千対)・出生性比及び合計特殊出生率))

兄弟の年の差である、わずか6年の間に、生まれる子供は2割(20万人)減った。
これは、衝撃的な数字だ。
出生数が横ばいであれば生まれたはずの子供が、20万人いなくなったのだ、と考えたら衝撃の大きさが分かる。ハーメルンの笛吹き男が20万人もの子どもを連れ去ってしまったとでもいうのか。

例えば給料が2割減ったら生活が激変し、たぶん今まで通り暮らしていけない、ということは誰だってイメージできるだろう。
想定よりずっと速いスピードでこの国の子供は激減している。

もはや非常事態だ。
「人」がいなければ、どんな社会活動も経済活動も維持できない。
国民がいてこその「国」なのだから、国家そのものの存亡が危ぶまれる事態だ。

2.当事者としての率直な思い

「人口が少ないなら少ないで、小さな国家としてやっていけばよい」という主張はあり得る。
今後、どこかの水準で人口の増減が均衡・安定するなら、それを目指してもよい。
しかし、問題は「減り続けること」だ。
常に「今年より来年が少ない」状態になれば、今年と同じ人的リソースが、来年は確保できない。
ある時点の人口を前提に設計された社会が10年後に維持できなくなる。
そして「減り続ける」の最終的な到達点は「消滅」だ。

大げさな言い方ではない。まさに、国家有事なのである。
進行がゆっくりだから、真剣に慌てていないだけだ。

少子化対策の必要性は、みんな分かっている。
何も対策がされていないとは言わない。
「子育てしやすい社会」を標榜し、子供を持つ世帯への様々な支援策が講じられてきた。
子ども手当、教育費無償化、医療費助成などの経済的支援。
育休制度の充実、保育園の整備など仕事との両立支援。
さらには結婚、妊娠・出産への支援策…。

2人の子供を育てる私自身、様々な制度の恩恵を受けてきたし、今も受けている。

しかしその前提で、当事者として私が思うことは、「少子化は止まらないだろう」ということだ。

だって、「子育て楽しいな~」「支援策で子育て楽になったな~」とは思わない。
いつも「しんどい」と思っている。「めちゃくちゃしんどい」と思っている。

誰が好き好んで、こんな苦しい日々に突き進むだろうかと考えたら、
もう、私の後に続く世代は、そんなことをしないだろうと思うし、その気持ちがよく分かる。
子育てしていて感じる率直な思いは、「この先、誰も子供なんか産まなくなるだろう」ということだ。

何でそう思うかを以下に書いていくが、これは私の一当事者としての個人的な感想であり、
根拠をもって何かを論証しようというものではない。
子育て真っただ中にいる当事者の声のひとつとして読んでいただきたいと思っている。

3.「社会から歓迎されていない」子育て

子育てをする身として「少子化は止まらないだろう」と考えるのはなぜかというと、
子供という存在や、「子供を産み育てること」が、社会から歓迎されていないと感じるからだ。

仮に経済的支援があっても、制度が充実しても、この「社会から歓迎されてない感じ」がなくならない限り、
みんなが安心して、喜んで、子供を持つということはないだろうと思っている。

・仮定の未来に対する嫌な想像

「社会から歓迎されてない感じ」について説明するにあたって、最初に次のような私の想像を書いてみる。

仮に、いつかの未来、思い切った少子化対策が実行されたとしよう。
まさに「異次元の」少子化対策。

例えば、「子供を3人産めば、2000万円支給されます!」ってことになったとしよう。

少し前、老後資金が2000万必要だとかの話もあったが、
子供3人産めば老後資金がまるっと手に入る、と。
そんな施策が実行されたらどうなるか?

私の悲観的な想像はこうだ。

結果、
子供を育てるという行為への共感や敬意が社会からすっかり失われ、
子供を育てている人は「2000万ほしさに子供を産んだ人」との侮蔑を受けるようになるのだ。

実際にもらった人だけでなく、子供2人以下の人もおしなべて、
「2000万円が欲しい人/今後もらえる可能性ある人」として、蔑視の対象になるだろう。

2000万円あれば贅沢な暮らしができるはずだといって、子育ての苦労を語る言葉は受け入れられなくなるだろう。
子育てを理由に早く帰る社員は、「迷惑だから、2000万円もらって早く辞めてよ」と言われるだろう。
子供の虐待のニュースが出るたびに、「2000万円ほしさに子供作る親が増えた結果だ」と言われるだろう。
悪意の渦巻くSNS界隈では、きっと、「2000万乞食」という言葉が出現するだろう。
いま、「子持ち様」という嫌悪の言葉があるのと同じように、
子連れの家族が様々な場面で「2000万乞食が大きな顔をしている」と憎まれるだろう。

2000万円もらえる以上は完璧に子育てすべきだといって、子育てへの要求水準はますます高くなり、
親はますます献身的に子供を育てることを要求されるだろう。
不十分な(とみなされる)子育てをする親に対しては、
「私たちの税金から2000万円恵んでもらってるくせに」といって、
バッシングがされるだろう。
まるで一時期の生活保護バッシングのように。

悲観的すぎる想像、あるいは被害妄想だと思うだろうか。
そんなことはない。「子持ち様」から「2000万乞食」までの距離は、そんなに離れてないと私は思う。

私が子育てをする中で感じている「社会から歓迎されてない感じ」を突き詰めた想像が、そういうものなのである。
ここからは、その「社会から歓迎されていない感じ」の中身をもう少し具体的に文章化してみたいと思う。

・いつもどこでものしかかる「肩身の狭さ」

子供を育てる生活が、私自身は、とても息苦しい。
子供を育てることで、私はこの社会において、とても「肩身が狭い」立場になっていると感じる。

現状、私はフルタイム労働しながら、子供を育てているが、その日々は常時息苦しく、常時肩身が狭い。
勤務先に行けば、育児のために定時で帰らざるを得ず、残業もできない。
居残る同僚たちを尻目に、いつも先に帰っている。
しょっちゅう子供が体調を崩し、休まざるを得なくなる。
いつも「すみません」と言っている。
保育園に迎えに行けば、迎えが他の子より遅くなっていることに肩身が狭い。
時間に遅れれば、ますます肩身が狭い。
そして、自宅マンションに帰れば、子供がバタバタ走り回って、周囲の部屋にうるさくないだろうかと、肩身が狭い。
買い物に行けば子供が店内で商品を触ろうとし、迷惑をかけてないだろうかと気になってろくに商品も選べず、肩身が狭い。
電車に乗れば子供が飽きて騒いで、他の乗客から怒鳴られるのではないかと肩身が狭い。
外食しに行けば子供が食器を投げたりこぼしたりして…以下略。

無数に挙げられる肩身の狭さ。

一方で、仮に子供をベビーシッター等に預けて出かければ、
「親の都合で子供を預けるなんてかわいそうだ」
「仕事などやむを得ない理由がない限り、子供は親が見るべき」
などと後ろ指指されそうで、肩身が狭い。

つまり子供を連れているときも(子供が迷惑をかけるので)肩身が狭いし、
子供を同伴していないときも、(親の責務を放棄してると非難されるので)肩身が狭い。

だから24時間、常時、息をしている間ずっと肩身が狭く、息苦しい。

何も悪いことをしているわけではないのに、
子供を育てながら社会の中で暮らすという当たり前のことをしているだけなのに、
何かひどく悪いことをして、社会に借りがある人のような気分だ。

「社会に歓迎されてない感じ」は、このような「肩身の狭さ」となって、私にのしかかってくる。
多くの場合、「肩身の狭さ」は、母親に対してより重く、より強く感じられるものだ。

ではなぜ、肩身が狭いのか?
なぜ、社会に歓迎されてない感じがするのか?

「その2」に続く

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